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アモリム、キャリントン到着の舞台裏

マンチェスター・ユナイテッドが新たな時代の幕開けを控えた月曜の朝、キャリントンは静寂と、冷たい秋の日差しに包まれていた。ここから、ルベン・アモリムの時代が始まろうとしている。

ユナイテッドは、ルート・ファン・ニステルローイが暫定監督として最後に指揮をとった日曜のレスター・シティー戦に3-0で勝利した。プレミアリーグで勝ち点3を獲得した後のトレーニンググラウンドは、いつも幸せな空気で満たされる。

しかし、この日はいつもとはまた違う雰囲気があった。静かな期待とポジティブな躍動感、そして前向きな勢いが、そこには漂っていた。

それはオンライン上でも同様だった。なんと4000人以上もの人が、ポルトガルのベージャ(リスボンから約80マイル)からマンチェスターのリングウェイ空港に向かうアモリムのフライトを追跡していたのだ。

午前10時にトレーニング施設に到着すると、最初に目にしたのは、ユナイテッドのメディア広報担当ディレクターのアンドリュー・ウォードだった。試合前の記者会見を見たことがある人なら、アンドリューの顔は分かるだろう。メディア向けのブリーフィングで、毎回ユナイテッドの監督を紹介しているのが彼だ。

マンチェスター・ユナイテッドのメディア部門に携わる人々にとっては毎日が多忙な1日ではあるが、携帯で忙しなく話しながらキャリントンの駐車場を歩いているアンドリューの様子を一目見れば、この日が例外的な日であることは、強烈に伝わってきた。

アモリムは午後に到着する予定となっていた。ユナイテッドの新監督は、わずか数時間前には、前クラブであるスポルティングの監督として最後の試合を指揮していた。

ポルトガル王者は、リーグ開幕から10連勝中であり、チャンピオンズリーグでは、マンチェスター・シティーを4-1で下すという、最高のスタートを切っていた。

しかし日曜夜に行われたブラガ戦で、緑と白のスポルティング軍団は2点ビハインドを背負い、ルベンの最後の試合は黒星で終わるかに思われた。ところが、触れたものすべてを黄金に変えてしまうという伝説のミダス王のごときアモリムの才覚は、彼を見捨てなかった。途中出場した守田英正が、ピッチに立って最初のタッチでゴールを決めると、さらに試合終了まで10分を切ったところで、モーテン・ヒュルマンの見事なシュートで試合は振り出しに。

そこから89分にリードを奪うと、アディショナルタイムに4点目が決まり、劇的な逆転勝利で試合は終了。ルベンとコーチ陣は、タッチラインで喜びを爆発させた。

 しかし、この試合終了の笛は、監督のキャリアにおける新たなエキサイティングな局面の始まりを告げるものでもあった。それは、マンチェスターへの旅であり、次の挑戦の始まりでもあった。イングランドで20回もの優勝経験を誇るチームを率いるという任務である。

独占動画:ルベンが到着video

キャリントンで彼を待っている間、私たちが待機していたアカデミーの建物では、リメンバランス・デーを記念して、11時に厳粛な1分間の黙祷が捧げられた。そのあと昼食の休憩が入り、そして午後2時13分、ついにアモリムが、男子チームの建物前に到着した。

黒塗りのメルセデスベンツから降り立った彼は、マンチェスターでは珍しい晴天についてジョークを交わしたあと、ストレットフォード・エンドに負けないほど雄大な笑みを浮かべて、最高経営責任者のオマール・ベラーダ、スポーティングディレクターのダン・アシュワース、テクニカルディレクターのジェイソン・ウィルコックスと抱擁を交わした。

それから、その場にいたメディア関係者全員にも「こんにちは」と挨拶して、一人一人と温かい握手を交わしてくれた。メディア関係者に対するこうした対応は決して義務ではないし、我々も期待することはないが、それだけに、ものすごくありがたく感じる行為だ。

アモリムが新監督に就任

アモリムはおそらく、この場所の重みと歴史を即座に感じとったことだろう。キャリントンの内外の壁には、アカデミーの名だたる卒業生たちの巨大な写真が飾られている。デイヴ・ブッシェルやトニー・ウィーランといった重鎮はいまでもクラブに存在し、サー・アレックス・ファーガソンやサー・マット・バスビーの黄金時代とのつながりを紡ぎ続けている。

その後は、これから何度となく繰り返されるであろうミーティングが行われるミーティングルームへと直行した。アモリムの初陣に向けての準備を始めるためだ。その初戦の相手は、奇しくも元マンチェスター・ユナイテッドのコーチ、キアン・マッケンナが監督を務めるイプスウィッチ・タウン。彼らの本拠地に乗り込んでのアウェイゲームとなる。

トラクターボーイズの異名をとるイプスウィッチは、日曜の試合でトッテナム・ホットスパーを2-1で下し、今シーズン初めてプレミアリーグで勝利を収めた。

欧州を代表する指導者:ルベン・アモリム

アモリムはおそらく、前回キャリントンを訪れた際に、マッケンナと顔を合わせている。アモリムはジョゼ・モウリーニョが監督だった2018年に、ユナイテッドでインターンシップを経験したことがあるのだ。

そのあと彼は、インターンからファーストチームの監督、そしてポルトガルのチャンピオンとなり、今や、フットボール界において世界で最も重要なポストとも呼ばれる位置まで上り詰めた。

もし彼がユナイテッドの監督に求められる責務に、これまでの輝かしいキャリアで乗り越えてきた他のすべての課題と同様にうまく対処できるのであれば、澄み切った晴天のキャリントンでのこの一日は、輝かしい日として記憶に留められることだろう。

そう願いたい。しかし、そのためにはやるべきことが山積みだ。ルベンの幸運を祈る。そして、イプスウィッチを打倒しよう。

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